会社員の皆さん、日々のお仕事お疲れ様です。
今回は、会社員の多くが苦しんでいる“残業”という日本の悪しき文化をテーマに、実践的な残業をしない方法と、それを実施するためのマインド(心持ち)について取り上げます。
日本の会社員と残業の切っても切れない関係
本題に入る前に、なぜ残業が未だに深ーく根付いているのかについて少し書かせてください。
残業することをどう捉えるかは、文化によって違います。
よく言われることですが、欧米では残業をしていると「仕事のスピードが遅くて時間内に与えられた仕事量をこなせない奴だ」と思われます。
あまり続くと、残業しないように仕事量を減らされ、それでも残業ばかりだと、「君はこの仕事に向いてない」とクビになってしまうこともあります。
一方、日本企業は、未だに遅くまで残って仕事をしていると「仕事熱心で偉い」と思われて、評価にマイナス影響が出ることはありません。
残業する時間が遅くなればなるほど、残業する日が続けば続くほど「一生懸命会社のために働いている」という印象を持たれ、そういう人が出世しやすくなります。
これには、日本の年功序列の考え方が根深く関係しています。
入社歴の浅い社員は、安月給で、しかも上の世代が詰まっていれば出世もなかなか難しいという状況です。
一生懸命仕事をしてもなかなか出世も昇給もしないので、せめて残業をたくさんして残業代を稼ぎ、手取りを少しでも上げようとします。
若い社員はやる気も体力もあるので、毎日遅くまで働く事ができてしまうのです。
その姿を見た上司が、「自分も若い時はこうだったなー」と思い、「毎日遅くまで残業してる奴」を「やる気に満ちている有望な若手」と勘違いしてしまい、高い評価をつけます。
結果、同じ仕事をしている中であれば、いつも遅くまで残業している人間が早く昇進できるようになり、こうして残業を美徳とする間違った価値観を持ったマネージャーが再生産されていくわけです。
実際には、ただ残業代が欲しいだけなので、本来1時間で70%終えればいい仕事を、わざと3時間かけて95%まで仕上げたり、勤務時間中に何度も喫煙室で休憩を取ったり、非生産的な仕事を行っている事がほとんどですが、そんなことはお構いなしに、とにかく「長い時間、会社に残って居る」事が評価されるようになるのです。
この社会構造があるので、日本の会社には「残業をするやつ=仕事熱心」という古い価値観がいまだに蔓延しているのです。
残業をしないための実践的な3ステップ
さて、本題です。
働き方改革などの波に乗り、古い体質から抜け出た企業を除き、日本の多くの企業は未だに「上司が残っていると先に帰りづらい」「先陣を切って退社するのは周りの目が気になる」という雰囲気があるでしょう。
ここでは、そんな状況でも残業をしないでサッと帰るために今日から実践できる行動を3ステップでお伝えします。
- 実際の予定の有る無しに関わらず、他人との予定をスケジューラに入れておく
よく言われる方法として、別の予定を入れちゃうというやつです。
が、これだけでは失敗に終わることも多いのが事実。
その失敗のほとんどが、「ジム」とか、自分の習い事の予定を入れてしまうことにより発生します。
これだと、「自分次第で調整可能」と思われてしまい、強制力が弱い状態です。
そうならないためのポイントが「他人を巻き込む予定を入れる」ことです。
「親の通院」とか、子供がいれば「塾送迎」とかでもいいですし、「家の水道工事」「〇〇さん家訪問」「〇〇さんミーティング」など、本当はそんな予定がなくてもいいので、他の人との約束を作って、上司や会社の人がつべこべ口出しできない予定を入れることが重要です。
また、自分でも本当にそのような予定があると思い込むことで、自分に言い訳をしないようにします。
何個かそんな予定を考えたら、スケジューラを見た人がすぐ分かるよう、定時後に予定を入れておきましょう。 - 定時の5分前から、急にソワソワする
スケジューラに予定を入れたら、終業定時の5分前までは普通に仕事をし、5分前になったら急に焦って仕事を終わらせにかかりましょう。
荷物を整理したり、机の上の物をしまったり、5分前から必死になって、定時ちょうどにパソコンをシャットダウンできるようにします。
打合せの最中でも5分前になったら一人荷物をまとめ出しましょう。
この時のポイントは、「急いで帰らなければいけない用事があります感」を周囲にさりげなく伝えることです。そのためにソワソワするのです。
「仕事よりも優先順位の高い何かがあって、急いで帰らないといけないんだな」と思わせる事ができれば、急な仕事を振られることは回避できる確率が高まりますし、仮に振られたとしても「今日は予定があるので、明日やります」等と言いやすくなります。 - 定時になったら即刻退席する
これが肝です。
定時になった途端に席を立ち退社します。
周りの様子を伺った瞬間に、席を立ちづらくなります。
一生懸命仕事をしていると、どうしてもキリのいいところまで進めたくなり、「このメールだけ今日中に返信したい」「この資料のここまではやり終えたい」などなど、つい少し定時を過ぎてでもやってしまう事があるかと思います。
それが命取りです。
定時前後になると、残業好きは事務所を見回し仲間を探します。
その時にまだまだ帰るそぶりを見せていないと「あいつは今日は残業できる日だな」と思われ、ムダな雑談やタバコ休憩に付き合わされたり、重要でもない仕事を手伝わされます。
さらに遅くなると、「こんな時間までお疲れ様!残ってるメンバーで軽く飲み行くけど、どう?」なんて断りづらい誘いをもらってしまうことも。
定時になったら何が何でも席を立つ。これが唯一にして最大の難関ですが、これさえできれば定時帰りが確定です。そのための1と2のステップですので、意を決して実行しましょう。
マインドをセットしなおすことが必要
このページをここまで読んでいただいたということは、あなたはすでに残業が常態化しつつある、もしくは毎日残業続きでウンザリしており、何とか抜け出したい状態と思います。
そんな人が定時に帰ると、最初は「アレ?今日は残業しないんだ」と思われるかも知れません。数日間は「珍しいこともあるもんだ」という感じで見られ、その視線が気になるでしょう。
そう考えると、定時に帰るハードルが高く感じられ、いまいち思い切れないのでは無いでしょうか。
現状を抜け出す時、最初は誰でもそうなるものです。
思い切って行動するためには、残業に対する考え方を180度変える事が必要です。
冒頭で、日本の会社には「残業=熱意の表れ」という、古く非生産的な価値観が根付いてしまっていると書きました。裏を返せば「定時で帰る=やる気のない人」という考え方になるでしょう。
あなた自身はどうでしょうか。
この会社の価値観に飲み込まれてしまっていないでしょうか。
『そんな古い価値観は持っていないし、頭では分かっているが、空気感というか…いざその場になるとつい残業してしまう…』
という気持ちもわかります。
でも、そうなってしまうのは何故でしょうか。
自分自身の中で、残業しないで帰ることに後ろめたさを感じてしまうから、ではないでしょうか?
後ろめたさを感じるのは、古く非生産的な価値観の中での“正しい行動”をしていないからです。
自分自身も、会社の価値観に飲み込まれてしまっていた。
ということを自覚する事が大事です。
その上で、『自分は欧米のような「残業」=「能力が足りていない証明」という価値観を持ち、定時で帰るんだ』と改めて自分の中で、マインドをセットしていきましょう。
これができれば、実行に移すことは難しくなくなります。
「本当に仕事量が多すぎて終わらないので、残業するしかない」と考えてしまう人もいると思います。
しかし、それも本質的には同じです。
「自分のプライベートの時間を削ってでも仕事をやり遂げる」というのは聞こえはいいですが、古い非生産的な考え方だと自覚してください。
残業をしてものすごい仕事量をやり遂げると、「あの人は責任感が強い」「困難な状況でもやり遂げる粘り強さがある」等と評価するのは、日本に昔からある非生産的な悪い文化の典型例です。
その本質は、会社組織の無謀な計画を実行するために社員個人に自己犠牲を強いているだけです。
少し大袈裟ですが、最たる例は、太平洋戦争の時の神風特攻隊です。
お国の為に、自らの命と引換えに敵艦隊に飛行機ごと突っ込むという、正に組織のための自己犠牲そのものです。
『時間をいくらかけてでもやりきる』は古く非生産的な考えで、『時間内にできる最大限をやる』が自分の価値観だ。ととらえ直し、マインドセットしましょう。
まとめ
ここまでの説明を簡単にまとめます。
定時でサッと帰るためには、日本の会社に残業が蔓延している構造を理解した上で、その会社の価値観の押しつけに気付き、考え方を180度変えて行動を起こす。
これだけです。
最初のうちは、夕方になって突然今日中の仕事を頼まれたり、打ち合わせや来客が長引いたり、中々計画通りに進まないこともあると思います。
それでも、諦めずに、断続的にでも“定時帰り”を続けていると、いつのまにか「あいつは残業しない奴」というイメージがついて来るでしょう。
そうなればもう大丈夫。
本当に大変な時じゃない限り、残業を頼まれることは無くなり、定時で帰っても誰も何とも思わなくなります。
残業に嫌気が指している人は、今すぐにマインドを変えましょう。
残業してまで=自分の人生を犠牲にしてまで、する仕事じゃないなら、サッと帰ってプライベートを楽しみましょう。
会社の都合で自分の人生をムダに過ごしてはいけません。
皆さんが、古い会社・古い自分との戦いに勝利することを応援しています。
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